留学生教育学会 Announcements 【緊急アピール】外国人留学生受入早期再開について

【緊急アピール】外国人留学生受入早期再開について

2021年9月9日  

留学生教育学会       
会長 近藤 佐知彦     
  (大阪大学教授)    

 オリンピック・パラリンピック関係者に対する条件緩和などの例外はありましたが、日本では海外との国境を越えた人の交流が厳しく規制され続けています。留学交流についても例外ではありません。国費留学生など一部を除き、留学ビザの新規発行や効力が停止されており、2021年1月からは新規の私費留学生の入国や一旦帰国した外国人学生等の帰国に対しては実質的な「鎖国状態」が続いています[i]

 一方、世界を見渡すと、ビザの発行や効力を停止した我が国のようなアプローチをとる国ばかりではありません。適切な保健衛生管理や感染防止策を条件としつつ、コロナ禍の下でも留学生受入を途絶えさせていない国も多いのです。2021年8月の時点では、日本以外のG7のすべての国はあらたな留学生の入国を認めています[ii]。またG7以外の例として、隣国の韓国では今年上半期に3.4万人の留学生を入国させています(前年比82%減)。そのうち255人がコロナウィルス陽性者だったのですが、そのすべてが入国時の検査、もしくは隔離期間中に感染していると診断された学生でした。韓国教育部ホームページでは、留学生が原因となって市中で感染が拡大した事例はまったくないと強調し、感染症制御と留学生受入が十分に両立出来ることをアピールしています[iii]

 各国が留学生の受け入れを進めている、ということは、我が国でのまなびを希望する外国人に対して日本は国境を鎖している一方で、日本人の若者は海外への留学を実現することが可能になりつつある、ということでもあります。

 それぞれの若者にとって留学に最適の時期は限られています。相当の覚悟、準備そしてすくなからぬ投資をおこなって、外国人の若者は日本への留学を志しています。他国では留学生に向けて国境を開けており、我が国は留学生に対して留学ビザの発行・効力の停止を相変わらず続けるとすれば、以下の様な問題が生じ、これからの日本は留学先として選ばれなくなってしまいます。

  1. それぞれが自らの欲するキャリア実現に向け、まなびを深めることは基本的な権利です。現在の我が国の施策は日本留学を志し、日本で学ぼうとする若者の権利を侵害しています。
  2. その一方、日本の若者には海外でのまなびへの道が開かれつつあり、国内外で不公平感が生じています。
  3. 東アジアに関心を持つ外国人は、国境を鎖したままの日本に見切りをつけ、韓国などへ留学先を変えつつあります。
  4. 交換留学・複合学位課程などについては、日本からの派遣のみで、受入は不可能という片務的状況です。これでは留学交流事業の互恵的・双務的な運営は不可能で、日本とのパートナーシップを見直す海外大学等が出てきます。
  5. 日本渡航が不可能で将来への見通しもつかないため、海外の日本語学習人口や進学準備コースで学ぶ学生数が急速に減少しつつあります。その一端としては、例えば海外での一回のEJU(日本留学試験)受験者数は5000人弱から3500人余まで激減しました[iv]。回復の兆しはまったく見られません。
  6. 海外の日本語教育機関、プログラム、またエージェントなどは次々に閉鎖されており、諸外国において長い年月をかけて築かれてきた「日本留学実現へのエコシステム」は音を立てて崩れ去りつつあります。
  7. 我が国での留学生受入基盤である日本語教育機関の経営は絶望的な状況です。大学・専門学校の私費留学生の大部分は国内の日本語学校を経て進学していますから、来年度以降に大学等に進学する留学生数は大幅に減少します。日本を共に支える仲間としての外国人高度人材の輩出も、将来にわたって期待出来ません。

様々な関係者が協力をし、我が国では「留学生30万人」を実現することが出来ました。しかし、コロナ禍の今、水際対策と外国人受入との両立を真剣に考えなかったために、その勢いは大きく削がれつつあります。このままでは日本における留学交流は「10万人計画」時代のレベルにまで後退し、取り返しのつかない事態を招きます。

 以上のような問題意識を踏まえ、私たちは以下を広く関係者に訴えたいと思います。

  1. ワクチン接種記録、隔離、検査など様々な手法を組み合わせ、国内の感染を抑制しながら、留学生受入早期再開に向けた条件整備を進めませんか。
  2. 母国においてワクチン接種が困難な若者には、ビザ交付時や入国時に日本の責任で接種を実施するといった思い切った施策を打ち出すことで、他国への留学と差別化し、日本留学の魅力を向上させる工夫も出来ないでしょうか。
  3. 留学生受入と水際対策を両立させている各国の事例なども参考に、留学生教育に携わる様々なステークホルダーが連携しながら、留学生受入の社会的意義を国内にアピールする広報活動をはじめませんか。

 私たちは深い憂慮の念を抱きつつ、上記を提言致します。

以上     


[i] 新型コロナウィルス感染症に関する日本人留学生および外国人留学生等への情報提供および学生の学習機会の確保について(依頼)文部科学省 https://www.mext.go.jp/content/20210401-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

[ii] 毎日留学ナビ:海外留学サポートセンター(9月1日更新)https://ryugaku.myedu.jp/info/travel_covid19.html

[iii] Korea urges ‘risk’ students not to travel, reveals decreases https://studytravel.network/magazine/news/0/28412

[iv] 日本留学試験受験者数の推移(日本学生支援機構)https://www.jasso.go.jp/ryugaku/eju/about/data/examinees.html